石井熱錬 ~COLUMN~

Vol.3 浸炭窒化について

鋼材の表面硬度を上げる処理はいくつかありますが、浸炭と同時に窒化処理も行う「浸炭窒化」もそのひとつ。700~900℃程度と一般的なガス浸炭よりも低い温度で炭素と窒素を侵入させながら焼入れすることで表面を硬化させる手法です。メリットは、NH3(アンモニア)の気体を雰囲気ガスとして用いることで、NH?から生成したN成分により、窒化と浸炭が同時進行するので焼入れ性が向上すること。そのため、通常のガス浸炭では対応できないSPCC(冷間圧延鋼板)や低炭素鋼などの非合金鋼でも処理が可能です。しかも、材料コストの軽減が図れるといった利点も。また、前述のように、ガス浸炭よりも低い温度で焼入れすることで、熱による変形や歪みも最小限に抑えられます。今回のコラムでは、熱処理・真空浸炭のエキスパート「株式会社石井熱錬」が、この浸炭窒化についてお伝えします。

 

さらに、合金鋼で浸炭窒化を行うと、表層部が均一なマルテンサイトとなるため、通常のガス浸炭で見られるような表層部の硬度低下を回避できます。さらに、部品が高温下で硬度を損なう「熱なまり」を抑制する働きも。近年では、歯車など動力伝達部品の接触面での耐ピッチング性や耐摩耗性など、接触疲れ強さの向上を目的とした浸炭窒化処理がよく行われています。浸炭窒化処理なら、石井熱錬にご相談ください。

 

 

浸炭窒化と浸炭の違い

前述のように、浸炭窒化とはC(炭素)だけでなくN(窒素)を同時に侵入させながら焼入れすることで表面を硬化させる熱処理です。窒素を使うことで処理温度を700~900℃程度と低くできる点が最大のメリットで、これにより高温下で生じる材料の焼きなまり(硬度低下)を防ぐことが可能。しかも、窒素が焼入れ性を改善するので合金鋼だけでなく、安価な低炭素鋼を処理でき、材料コストの軽減にも役立ちます。

 

通常、処理時間は15分から4時間程度で、この場合0.1~0.8mm程度の浅い硬化層が形成されます。一般に、処理温度や処理時間が同じであれば、浸炭よりも硬化層が厚くなることが知られていますが、実際の現場では、処理温度は通常のガス浸炭と同様に設定し、処理時間を短くすることで硬化層をより浅くするといった目的で用いられることがほとんど。硬化層を浅くすることで表面処理に伴う歪み量を抑えることが可能です。また、窒化処理した材料は、焼き戻し抵抗が大きく、500℃程度の高温に晒されても表面硬さの低下がほとんどありません。

 

熱処理方法

通常のガス浸炭は、天然ガス、都市ガス、プロパン、ブタンガスなど変成した浸炭性ガスまたは液体を滴下し発生した浸炭性ガス中で処理品を加熱し、浸炭を行います。浸炭窒化とはこうした通常の浸炭性ガス雰囲気中に数パーセント程度のNH3(アンモニア)を添加し、850℃前後の温度で処理する方法です。処理時間は求める硬化層の深さに合わせ、15分~4時間程度に設定し、処理後は油焼入れして仕上げます。なお、ガスを用いた浸炭窒化ではやや残留オーステナイトが生成する傾向はありますが、上記の通り、低温での処理が可能なため比較的焼入れ性の低い材料にも応用が利きます。また、浸炭窒化には特別な設備は不要で、一般的なガス浸炭路をそのまま用いることが可能です。

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